芸のないタイトルだとは思うが、まあ許せ。
実際のところ、彼女にはこの二文字がぴったりなのだ。
忘れるはずもない、ある夏の夕方...
当時小学二年だった彼女が公園の前を通りかかると、一人の男がベンチから手招きした。
薄汚い服装だった。
彼女の足が止まった。
好奇心というよりも恐怖だった。
近づいてきた。
飴を一つ差し出された。
同じく恐怖心から受け取った。
手を引かれた。
逃げられなかった。
トイレに連れ込まれた。
男がチャックを下ろした。
ペニスを口に含まされた。
口中に射精された。
苦い液体を飲まされた。
頭を優しく撫でられた。
家に帰った。
親には相談しなかった。
怒られるのが怖かった。
気丈に振る舞った。
しかし、トラウマになった。
あの日の記憶だけ消したかった。
ずっとそう思いながら大人になった。
いつしか彼女はSMに興味を持っていた。
ある日私のサイトと巡り会った。
勇気を出してメールを送った。
調教を受けた。
回を重ねた。
気が付けば、さんざん自分を苦しめてきたあの日の出来事は彼女の宝物になっていた。
かいつまんで話せば大筋はこんなものだ。
同じようなことで悩んでいる女性がいるならひとこと言っておく。
過去に起こった事実というものは、いかにしても変えようがない。
しかしながら、その事実に対する感情は未来によって大きく変化し得る。
過去によって未来を閉ざすのは愚かなことだ。
もしも過去に苦しんでいるのなら、その未来にこそ活路を見い出して欲しい。
その苦しみが性的なものであれば、ほんの少しSMの世界に触れてみるのも悪くないだろう。
彼女のような女性が増えるのなら、私にとってもこれ以上の喜びはない。
余談だが、彼女の強い希望もあって、その思い出のトイレに二人で行った。
そこで私は彼女のフェラチオを受けた。
粘膜の摩擦よりも彼女の表情に快感を覚えた。
私は一人の女性が過去の呪縛から完全に解放され、それが至上の喜びに昇華する瞬間を確かに見た。
SMには何と不思議な力があるのか!
当時と同じく、私は口中に射精した。
見れば彼女の顔は仏のようになっていた。
更に余談だが、公園のベンチでしばらくたたずむと、私は回復した。
再びトイレに行き、今度はセックスした。
壁に手をつかせて立ったままバックで突くと、通りがかりの人や近所の家にまで聞こえる程に彼女は声をあげた。
その時、私はもう誰に見られてもいいと思った。
おそらく彼女もそうだったに違いない。
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