猛烈に台湾に行きたい!
日々、俺はその衝動と戦っている。
このところ毎年三月になると台湾へ行くのが恒例であり、今年は介護で行けないというのもその理由の一つには違いない。
けれども、話はもっとシンプルだ。
今、親父は西洋薬ではなく漢方薬を服用している。
よって、処方されたそれを毎日家で煎じる必要があるのだが、その煎じる最中の匂いが台湾を思い出さずにはいられない。
台湾の代表的な匂いといえばコンビニの台湾おでんと夜市の臭豆腐。
そもそも台湾おでん必須の八角はいかにも漢方薬に使われてそうであり、それら匂いはどこか漢方的で、台所へ行くたびに俺は台北の街を思い出さずにはいられない。
思い出すのは時に夜市の人混みであり、リムジンバスを降りた時の台北の匂いであり、漢方薬屋が軒を連ねる油化街の通りであったりと、いろいろな記憶が半ば強制的に蘇る。
こうなるのは海馬と嗅覚を司る脳の部位が近いからという説もあるようだが、とにかく匂いというものはやたらと過去の記憶を刺激する。
こういう表現も何だが、親父が生きている間は毎日強烈に台湾を思い出しつつも行くことができないというジレンマに陥るしかなさそうだ。
いつの日か来たるべき時が来て、やるべきことを粛々とやったら、俺は真っ先に台湾へと向かうに違いない。