「蓋取れば、幸せあふれるお重かな」

親父は以前勤めていた会社の俳句倶楽部に今も属しており、月に何句かを事務局へ送らねばならない。

それを会員皆で点を付け、特賞等々が毎月発表される、そんな具合のようだ。

時折テーブルの上のメモに句が書かれており、年始に目にしたのが上の句である。

これを出せば、おそらくは当月の最低点を叩き出すのではないか。

しかし、俺にとってはとても嬉しい句である。

というのも...

昨今では正月におせち料理を食べない家庭も少なくないと聞く。

そんな中、我が家はしっかりと伝統を紡いでおり、しかもそれは手製のおせち料理である。

親父がこうなってからは当然全て俺が作っている。

そんなおせちの蓋を開け、親父はそこに幸せを感じたのだろう。

俺は120点を付けたいと思う。

俺も一句詠んでみた。

「大相撲、豆腐、漬け物、高倉健」

その心がわかるか?

それすなわち、歳を重ねるごとに年々好きになるものなり。