特に何の日でもないが、親父にボールペンをプレゼントした。
モンブランのマイスターシュティックだ。
マイスターシュティックといえば万年筆を多くの作家が愛用したり各国大統領の署名に使われたりと有名だが、似たような太さでボールペンタイプもあり、今回それを親父に送ったのだ。
親父は糖尿の影響で指先の感覚が鈍っており、胴の細いペンを自在に使うことができない。
よって安ボールペンに握りを太くするグリップを付けて使用しているのだが、
「親父にモンブランもいいのではないか?」
とある日ふと思ったら、もうその日の内には親父の名前入りで注文していた。
値段は58,000円だ。
俺が愛用しているクロスのボールペンが30本ほど買える。
贈った時に値段を伝えると、まるで、
「こんな高いボールペン要らんのに...」
とでも言いたげに口をあんぐりと開けて絶句していた。
それから約三ヶ月、今では親父もそれを愛用していると表現しても間違いではないだろう。
握りが太い上にペン先がとても滑らかで書きやすい点が気に入ったそうだ。
親父は昔から毎日日記を付けており、
「ケネディー大統領みたいやな」
と冷やかすと、
「そうか?」
と、満更ではない様子。
いずれ俺がこのボールペンを使うことになるのだろうが、どうか今しばらく先のことであって欲しいと願う