人に会えば挨拶するのと同様、中華料理屋、もとい今どきの言い方では町中華に入った時の挨拶というものがある。

といって店主に挨拶するとか、そういう意味ではない。

店それ自体に挨拶するのだ。

それつまり、

「餃子一人前と瓶ビール」。

これが俺なりの挨拶であると心得ている。

と同時にそれは店のレベルを判断する一つの指針でもある。

過去の経験上、餃子がイマイチなら他の料理もイマイチと判断して良い。

一方、餃子が美味しければ他の料理にも一応は期待が持てる。

不味ければビール一杯でさっさと席を立つ。

これくらいであればちょっと食前酒を飲んだ程度で、胃へのダメージも最小限なので、二軒目で立て直せば良い。

とまあ、長年そんなことをやってきたわけだが、ここにきてちょっとずつ様子が変わってきている。

というのも、餃子の値段が年々上がってきたのだ。

500円オーバーの店も決して珍しくなくなってきたように思う。

これに大瓶一本頼めば1,000円を超えるが、こうなると「ダメージは最小限」などとは言っていられない。

中華好きには何とも難しい時代になってきた。

過去、あちこちの町中華に親しんできたが、唯一店の外観にびびって中に入れなかった店がある。

店の名前は忘れたが、その店は広島県の尾道にあった。

久保地区の中だったろうか。

とにかく、俺はその中華料理屋の店の扉を開けることができなかった。

台湾などでは観光客が絶対に入らないような店にもズケズケ入ったものだが、尾道のその店はそういう入りにくさともまた違う。

とにかく俺はその外観にビビッてしまった。

今思えば前回尾道へ行った時にリベンジすれば良かったが、今ふと思い出したのだ。

もし店が存続しているのなら次は度胸を決めて入ってみたい。