このサイトのサブタイトルには「本当の快感を知っていますか？」とあるが、別にこれは単なる飾りではない。
俺が当サイトを立ち上げた意義の一つに、Ｍ女の皆にはＳＭを通じて本当の快感を教えてやりたいという想いがあるが、今回はそれにまつわる話を一つ紹介しよう。
昔々のSM前夜、俺には彼女がいた。
愛奴ではなく、あくまで彼女だ。
彼女とＳＭプレイをしてみたいという願望は常々あったが、自分の性癖を上手く言い出せない程に俺はまだ若く、二人の関係が壊れるのが怖くて専ら普通のＳＥＸに終始した。
ＳＥＸは彼女に対する愛情に比例して丁寧に行った。
前戯もキスから始まって、おでこ、ほっぺた、首筋、肩、二ノ腕、そして脇の下。
ところが彼女は俺の唇が綺麗に処理された脇の下に触れようとすると、
「そこは嫌っ．．．！！」
といつも可愛いらしく腕を閉じた。
くすぐったいからか？
無理強いはしなかったが、嫌と言われれば言われるほど彼女の脇の下を舐めたいという願望は強まった。
そうこうしているうちに月日は流れ、やがて俺たちが付き合い始めてから最初の夏が来た。
その時俺は、なぜ彼女が脇の下を舐められることをかたくなに拒むのかを知ることになった。
彼女は脇の下の体臭を気にしていたのだ。
彼女の口から直接聞いた訳ではなかったが、俺には何となく分かった。
そんなことは俺にとって取るに足らない問題ではあったが、先天的なコンプレックスを人がどれほど気にするかは俺にも痛いほど分かるので、
「そんなの気にしなくていい」
とは簡単に言えなかった。
けれど彼女の脇の下をどうしても舐めてみたい。
どうすればいいんだろうか？
強引に舐めてしまえば彼女が傷つくだけだ。
あれこれ考えた結果、俺は今まで誰にも話したことのない深い心の傷を彼女に話してみる気になった。
お互いをさらけ出そうというわけだ。
それは俺にとっても勇気が要ることだったが、話をし終わった俺は開放された気分になり、その告白対象者、つまり彼女により深い絆を感じることができた。
それだけでも十分に意味のあることだった。
しかし、この形容のしようもない満たされた気分を彼女にも味わって欲しかったのと、本来の意義を思い出し、少し時間をおいてから、
「もし俺に言いたくても言えないことがあるんなら言ってみろ」
と促した。
彼女はしばらく考え込んでいたが、やがて「嫌いにならない？」と不安な顔で聞いてきた。
「もちろんだ」
と即答すると、煙草に火を付けて彼女の話を待った。
そして彼女は俺の思惑どおり脇の下の体臭について語り始めた。
デートやＳＥＸしていても俺に気付かれるのではないかと、ずっと気が気でなかった。
特に夏の屋外デートは気分が重かった。
脇の下を舐められるなど、とても耐えられない。
彼女は今までのしかかっていたコンプレックスを語った。
俺はただ黙って聞いた。
話を終えた彼女の瞳からは涙が伝っていた。
俺はそれを拭いてやりながら、
「馬鹿なやつ、そんなに気にしていたんならもっと早くに話せよ。そんなの何でもない」
と言った。
勿論それは本心だ。
その後、俺たちはどちらが言うともなしにＳＥＸした．．．
汗ばんだ体を寄せ合って俺たちは余韻に浸っていたが、その時、私は彼女の腕を取ると脇を開かせ、そこに唇を這わそうとした。
「嫌っ、だって私．．．」
「もう知ってるよ．．．」
俺はそう言うと、半ば強引に唇を這わし、そして何度もキスをした。
俺に告白したからか、彼女は以前のように拒むことはなかった。
そして言った。
「そんなところ舐めていいの？本当にいいの？大丈夫なの？」
とても信じられない、そんな感じの言い方だった。
「いいよ、だってここはお前の脇の下だろ。舐めたいんだ」
そう言うと俺は更に激しくキスの雨を降らせた。
どれくらいの時間そうしていただろうか。
やがて彼女は、
「嬉しいっ、嬉しいの、私嬉しいの．．．」
と、涙をポロポロ流しながら俺の髪を掴んでは激しく乱れた。
その日を境に前戯では必ず彼女の脇の下を舐めるようになった。
あれだけかたくなに拒んでいた彼女ではあったが、それからというもの、むしろ脇の下を舐められることを好んだ。
そして忘れもしないあの日、それは彼女の部屋のベットでいつものように脇の下を丹念に舐めていたときのことだ、
「私イクっ、イキそうっ！！」
確かにそう叫んだ。
「えっ、本当か？」
俺は信じられなかった。
クリトリスに触れてもいなければ、あそこに挿入してもいないのだ。
脇の下を舐めただけでイクなんてありえない、そう思った。
横目で見ると彼女は息を荒げながら、苦痛に歪んだような顔をしている。
俺は激しく震える彼女の体を押さえ付けるようにして、いっそう下品に脇の下を舐めた。
すると信じられないことに、
「イクっ、イクっ、イクっ、ああっ、イクうーーーー！！」
と絶叫した彼女はそのまま気を失ったようにぐったりしてしまった。
「イッたのか？本当にイッたのか？」
彼女から返事はなかった。
しかし、その全身の痙攣を見れば達したのは間違いのない事実だった。
それも普段の私たちのＳＥＸより激しく。
俺は彼女が回復するまでに何本もの煙草を灰にしなければならなかった。
あれからずいぶんと月日が流れた。
俺は今、確信をもって言える。
当時、ＳＭプレイをしてみたいと密かな願望を抱きながらも実現できないでいた俺ではあったが、あの行為や精神的繋がりは紛れもなくＳＭそのものであった。
それも生半可なものではない。
核心に触れるものだ。
あの日あの時、本当の快感がそこにはあった。
彼女にも、そして俺にも。
さて、ここまでは前置きだ。
じゃあ、皆さんはＭ女として、あるいはＳ男として具体的に何をどうすべきなのか？
しかし、それはもう書くのを止める。
この話はＳＭの核心に触れるものなので、これ以上の安っぽい精神論の押しつけなど俺には野暮に思える。
ここまで読み進めた皆の心の中には、それぞれの思いや考え方があるだろう。
それで十分だ。
今でも時々、アメリカから彼女の手紙が届く。
たまに添えられてくる写真には、すっかり肉付きのよくなった彼女の笑顔が見られる。
送られてくるそれらの写真を見るたび、あの日の彼女の嬉し涙と絶叫を思い出す。
ありがとう。
本当にありがとう。
貴女にはかけがえのない大切なことを教えてもらった。
ｓｈａｄｏｗ
