ロウソク/蝋燭もまたSMにおいては広く知られた責めであり、その多くは麻縄緊縛とのセットで行われる。
ただし、一見メジャーに思えるこの責めもSM的に見栄えがするという利点を考慮したその手の雑誌やビデオの影響によるところが大で、蝋燭責めを頻繁に行うS男性は案外少数ではないかと思われる。
むしろ、女性の方が積極的に好むようだ。
こうなると責めとは言えなくなるが、その点についてはあれこれ付言しない。
世間のイメージに反して、褒美としてロウを垂らすのもまた立派なSMだろう。
蝋燭が責めに用いられた背景について私たちは容易に想像することができる。
麻縄同様、日常生活において身近な物を折檻に利用したであろうことは想像に難くなく、その慣行が現在の和製SM美に色濃く残されている。
海外のSMで蝋燭責めがあまり見られないのは、歴史の早い時期に蝋燭からカンテラやランタンに進化したためだと思われる。
依然テーブルに蝋燭は残ったが、彼らには鞭があったということなのだろう。
鞭文化の輸入により、日本の古典的責めであった竹刀(竹)責めが今日ほぼ姿を消してしまったのは残念だ。
蝋燭は鞭打ち同様直接打撃系の典型であると言える。
(その反対は言葉責めなどの間接精神系)
よって、彼女たちが蝋燭に求めるものはひたすらに肉体的苦痛である。
その苦痛を更に彼女たちは内面で快楽に昇華させるわけだが、その次元にまでS男性が関与するのは不可能であり、また、大きなお世話でもあるので、我々はただ思う存分に責め楽しめばよろしい。
蝋燭には低温(超低温)、中温、高温(超高温)があり、中でも低温(超低温)のものはSM用と称して販売されている。
最初は低温度のものから始めるべきだが、蝋燭責めは緊縛や鞭と異なり一人でも可能なため、M女性の中には既に自分自身で家庭用ローソクを垂らしている例も少なくない。
そういった女性に対して低温度のものでは全く物足りないだろう。
蝋燭責めのやり方は極めて簡単で、ただ火の点いた蝋燭から蝋を垂らせばいい。
ただし、注意しなければならない点があるので記しておく。
・適時垂らす場所を変えること。同じ部位に延々垂らしていると火傷の原因になる。
・決して顔には垂らさない。
・低温火傷にも注意する。
責めは自由だが、女性の顔に傷を残さないというのは当然のルールである。
失明など問題外。
顔にアイロンやハンダゴテといった話を聞いたことがあるが、もはや彼らは我々の同志でなく単に狂人だ。
・敏感な部分への蝋は注意する。
性器、クリトリス、肛門、脇の下、手のひら、足の裏などだ。
決して垂らすなと言っているわけではないので、誤解なきよう。
敏感であるということは同時に効果があるということでもあるが、あまりに執拗な責めは避けるべきだ。
・垂らす部位を変えるからといって、何時間も延々と蝋燭責めを行わない。皮膚障害の原因になる。
・顔に垂らすなと書いたが、俺は舌だけは例外としている。ただしこの場合、決して飲み込ませてはならない。
・麻縄は油分を含んでいるので万一無茶な責めで引火でもすると直ぐに解くこともできず、悲惨な結果をもたらすことになる。このような場合、ハサミを一本用意しておけば事故を最小限でくい止めることができる。
・その他、単なる緊縛においても時として事故が発生する場合があるので(特に吊し)、ハサミは調教師の七つ道具に必ず加えられるべき一品である。
いろいろ書いたが、要するに安全面さえ注意すれば後は好き勝手にやればいい。
一見好き放題なことを行っていると思われ勝ちな我々だが、それができるのも影でこういった配慮があるからこそである。
主導権を委ねられている責め手側はこの点忘れてはならない。
蝋燭責めの前に女性の体にオイルローションなどを塗っておくと後で蝋を剥がすときに便利だ。
ブルーのビニールシートではさすがに色気ないが、床に何か敷いておくと清掃が楽になる。
蝋はシャワーやトイレで流さないこと。
目詰まりの原因になる。
蝋燭責めの後は鞭打ちという定番のセットがあることを覚えておけばいい。
鞭打ちが終わる頃には随分蝋も落ちているはずだ。
香り付きの蝋燭で責めるのも時に新鮮だ。
個人的にフルーツ系はあまり好きではないが、どこか東洋を思わせるような香りの類は中枢神経を刺激して媚薬の効果をもたらす。
百貨店や東急ハンズなどで求めることができるだろう。
ただし、概ね高温度タイプなので注意すること。
「和」の項でも述べるが、蝋燭は単なる灯としても使えるので(当然のことだが)、雰囲気のある部屋で責めを行う機会を得たならばぜひ一本は用意したい。
電気の明かりでは決して味わうことのできない妖しげな陰影を楽しむことができる。
更にこだわりたい方は、一度アンティークショップを覗いてみるといい。
実に魅力的な燭台を目にすることができるはずだ。
こういった店をパートナーと共に巡ってみるのもまた楽しみの一つと言える。
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