介護に支障が出かねないので、
「包丁の怪我は十分に注意すべし」
との気持ちでこれまでずっと料理してきたが、ここにきてついにやってしまった。
それは突然起きた。
親父が、
「高野豆腐が食べたい」
と言ったので、リクエストに応えるべく乾燥した高野豆腐に包丁を当てて押し切ろうとしたその時である。
高野豆腐を切った、ちゅうか、この場合「割った」と書いた方が正解かもしれないが、その時に包丁の切っ先で左の手のひらを深く突いてしまった。
出血が止まらなかったが、人体のしくみを知っていれば特に慌てる必要はない。
出血が止まるまで、のんびりドキュメント番組を見ながら自分の血を吸い続けた。
30分程で止まったので消毒し、薬は塗らずにガーゼを当ててテープでとめた。
これでよろしい。
で、俺は一体何が言いたいのかといえば、
「高野豆腐は水で戻してはいけない!」
これをやってしまってはスポンジのようなバサバサの食感に仕上がってしまう。
そうではなく、乾燥したままの高野豆腐を何とか六等分ないしは八等分に分割し、グラグラのだしの中に投入すべし。
そうするとだし染みまくりでフワフワの高野豆腐が完成する。
俺はニンジン及び乾燥椎茸と一緒に炊く。
だしに椎茸の戻し汁を入れるのも必須で、味が全く違ってくる。
煮上がったら庭の柚子を一個もいで一皮入れる。
冷める頃にはほんのり柚子の香りが付いて実によろしい。
高野豆腐の煮物は日本酒の肴として最高だが、茶漬けで食べてもとても美味しい。
椎茸だしを十分効かせた上で砂糖少々多めの甘めに炊くのがshadow流やな。