現在、親父は週に二回訪問入浴サービスを利用して風呂に入っている。

これは介護士が家に来て親父を我が家の風呂に入れてくれる、というサービスではない。

親父が寝ている部屋の空きスペースに二分割式の浴槽を設置し、そこで入浴できるというサービスだ。

湯は表に停めてある軽自動車に積まれたボイラーからホースを引いて供給される。

その要領の良さと親切さはなかなかのもので、女性二人、男性一人の計三人に頭のてっぺんからつま先まで丁寧に洗われて、まさに王様の入浴を見ているようだ。

親父はこの週二回の入浴で十分満足しているようだが、それでもたまに頭が痒くなるようで、

そんなとき、

「ちょっと頭掻いてくれへんか」

などと頼まれる。

と、俺は洗髪ブラシで頭を擦ってやるのだが、その時の親父の反応が面白い、ちゅうか、笑わずにはいられない。

よほど気持ちがいいのか、

「ひひゃ~」

「うぅぅ...」

「くわぁ~」

などと、言葉にならない言葉が口から漏れて、それがおかしくて仕方がない。

食事の時間に起こす時、肩を叩いたりして起こすと何やら寝ぼけた反応なのだが、

いきなり頭をブラシで擦ってみると、やはり、

「ひひゃ~」

といった反応が返ってき、爆笑を堪えるのに苦労する。

訪問看護士の見よう見まねでベットに寝かせたまま紙オムツを使って洗髪する方法もマスターしたが、俺がそれを申し出ても受けたがらない。

若い女性に洗ってもらうことに比べれば俺などには洗ってもらう気にはなれぬということか。

まあ、俺はそれで多少は楽ができるので一向に構わないが。