俺には至福の時間が三つある。

その一つが、無心に、何も考えずに革靴を磨くこと。

皮ジャンの手入れもこれに加えていいだろう。

そんな至福の時間が毎年年頭に必ず訪れる。

すなわち、マラソン中継を横目でなんとなく見ながらの靴磨きだ。

元旦は社会人駅伝、二日と三日は箱根駅伝があるので、新年早々至福の時間を存分に楽しむことができる。

加えて正月三が日は朝から呑んでも良いことにしているので、ほろ酔い気分で靴磨き、何なら水割りなど飲みながらの靴磨きとなれば至福というよりも人生最特上の時間と表現してもよい。

靴磨きの愉しみは女にはわからんだろう。

電車や街でピカピカの靴を履いた女性は少なくないが、まあ、だいたいは安物のエナメル靴だ。

革靴を光らせている女性をほぼ見かけない。

その点、男はちょこちょこいるな。

といって俺は革靴にしても皮ジャンにしても別段高いモノを持っているわけではない。

安物でも手入れをすればそれなりのモノに見える。

酔っぱらった勢いでポチッと買った中国製の皮ジャンなどは手入れとモデルの良さ(?)で20万円くらいしそうな高級モノにしか見えない。

とはいえ、俺は安物を高く見せようとして靴磨きやらをやっているわけではない。

手入れをしていると皮が艶々と光り輝いてくるのが単純に楽しいからだ。

銀器を磨いてピカピカにすれば楽しいのと同じで、こう言えば女性にもわかってもらえるだろう。

男にはそれをまとう楽しみもある。

この時期、手入れをした皮ジャンと革靴で外に出れば気分も壮快だ。

いずれREDWINGかALDENのブーツが欲しいと思っている。

来年の正月はいずれかをせっせと磨いているだろうか?