まだ親父の介護の世話が要らなかった頃、

午前十時の映画祭→寿司や中華料理で瓶ビール→ほろ酔い気分で映画をもう一本...

というコースをよくやったものだ。

最高に贅沢な一日であることは当時から自覚していた。

なので、こうして介護生活が始まってからも、

「今までによく遊んだ」

というある種の達成感があるので、世間一般の人々が介護生活で感じるであろうストレスよりもかなり軽くて済んでいる。

そんな俺の現在の最優先事項は、できるだけ日々穏やかに親父に最後の時間を過ごしてもらうこと、ただこの一言に尽きる。

とはいえ、たまに実にくだらない事がきっかけで激突してしまうことがある。

俺が折れればいいのだろううが、親父に非があることも少なくなく、なかなか上手くいかないこともある。

ただし、とても素晴らしいと思えることがあって、どんなに激突しようが翌日には綺麗さっぱりと水に流れている。

親子だから当然といえば当然だが、お互いにさっぱりとした性分なので、何かをグチグチと粘着質に引きずることがない。

こうしてずっと一緒に過ごし、たまに激突するようになって認識したが、俺のこのさっぱり気質は俺が自分で育んだものではなく、親父から受け継いだものだったようだ。

感謝しかない。

この感謝を胸に次に何か激突したら俺が折れようと思うのだが、なかなか...